映画

「戦場のピアニスト」

あまりにメジャーな映画だからいつでも観られると思って、長らく観てこなかった。カンヌのパルムドールをはじめ数々の賞を獲っただけあって、いい作品だった。ただ、戦争映画でホロコーストを扱っていればこういう作品になるだろう、という想像の範囲を超え…

「弓」

好みのキム・ギドク監督による作品ということと、レンタル店で読んだあらすじが面白そうだったことから、以前から気になっていた。 いい雰囲気の映画だと思いながら観た。キム・ギドク監督にしては比較的暴力性は抑え目だし、穏やかな音楽も非常に良い。 た…

「パーフェクト・レボリューション」

以前何かの拍子にこの映画を知って、面白そうだと思ったのに、レンタル店には1枚しか置いてなくて意外だった。 面白かった。爽快で、満足いく映画だった。 ラストシーンはたしかに荒唐無稽だし、周りの人たちが突然協力姿勢になったのもよく分からないし、…

「アデル、ブルーは熱い色」

アデルを演じたアデル・エグザルホプロスの、子どもみたいな泣き方が良かった。ああいう、しゃくり上げるような泣き方をする女優は珍しいと思う。 顔だちも童顔だけど、あの泣き方が一層、幼さや、エマをはじめとする他人への依存性を強く感じさせる。 「ブ…

「うなぎ」

以前から日本人監督によるカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作として気になってはいたが、「万引き家族」が同賞を獲ってからはより観たい気持ちが強くなった。 他人に心を開かない役所広司を水槽の中のうなぎと重ねて描いている。 船大工を演じた佐藤允の…

「ルート・アイリッシュ」

ケン・ローチ監督の戦争映画とはどんなものかと以前から興味を持っていたが、戦争映画というより物語の軸はサスペンスだし、舞台も戦場ではない。 あのジャケットからは想像できない構成だったけれど、面白い映画だった。 真相に近づくにつれて言葉を失って…

「サラの鍵」

以前からずっと気になっていた作品だった。 弟のミシェルがどうなったのか、予告編だけでも引き付けるストーリーだが、生きているかもしれない「その後のサラ」を追うことで、最後まで飽きさせないシナリオになっている。 実の息子でさえサラの過去について…

「私の男」

海のシーンにせよ濡れ場にせよ、二階堂ふみがここまで体を張った演技をしているとは想定外だった。 それと合わせて、あどけない高校生から大人の女性まで見事に演じ分けている点も素晴らしい。 地味な田舎の高校生が、都会の高級レストランであそこまで美し…

「ヒミズ」

染谷将太と二階堂ふみの演技が良かった。特に染谷将太が迫真の狂気を見せていた。こんなにいい俳優だったのかと驚かされた。 園子温監督作品で鑑賞したのは3作目だと思うけど、たぶん人間を狂わせて救いのない結末に落とし込むのが基本路線なのだろう。 そ…

「酔画仙」

偶然にも、同じ日に借りたオールド・ボーイと主演の俳優が同じだった。 いい俳優だと思う。苦悩する演技などは、どこか庇護欲を抱かせるような愛嬌がある。 日本の統治が絡むシナリオだったので、もう少し時代変化に翻弄されるかと思えば、期待したほどでは…

「オールド・ボーイ」

面白かった。導入の引力も強かったし、普段あまり観ないジャンルではあるけど、サスペンスとしての出来も良かったと思う。アクションにも迫力があった。 ただ、相手がどうやってあれほどの仕掛けや設備を整えたのか、なぜそんなに財力があるのかなど、疑問点…

「嘆きのピエタ」

結構良かった。贖罪や悔悟、守るべきものができたが故の弱さなどテーマはありがちだったが、ある種のミステリー要素が加わることで見ごたえがあった。 「メビウス」と併せて考えることで、途中までキム・ギドク監督は母親へのコンプレックスが制作の根底にあ…

「メビウス」

「サマリア」がとても良かったので、キム・ギドク監督の作品から漁ってみた。なかなか面白かったが、物語に空間的な広がりが欠けていたように思う。 セリフが一切ない。うめき声や悲鳴のみで斬新だった。 いろいろな意味での倒錯を描いた映画だった。浮気に…

「冷たい熱帯魚」「恋の罪」

長く気になっていた園子温監督の作品に挑戦しようと、この2作を選んで観てみたが、現在のところ、自分にはよく分からなかった。「愛のむきだし」「ヒミズ」あたりはまだ気になるのでいつか挑んでみたいけれど……。 あと、どうやら自分は神楽坂恵の演技があま…

「サマリア」

たいへん良かった。キム・ギドク監督の作品は「春夏秋冬そして春」を観たことがあったことに後から気づいたが、この「サマリア」をもっと早く観ていれば、監督への評価もだいぶん違っただろうなと思わされるくらい、いい作品だった。2004年、第54回ベルリン…

「君の名は。」

話題作として気になっていたし、期待もしていた映画だった。地上波で放送されたのを録画して観てみた。ストーリーについては東京と田舎の高校生男女が入れ替わるのと、彗星がどうこう、というぐらいの前知識しかなかったので、まず「なるほどこういう話だっ…

「シン・ゴジラ」

話題作として気になっていたし、ある意味で期待もしていた映画だった。地上波で放送されたのを録画して観た。いろいろと疑問点はあったが、それなりに面白かった。 ゴジラを倒すために使われる兵器や鉄道などが、一つ一つ名前も明記されていた。使い方も含め…

「ブレードランナー」

SF映画はあまり観ないが、最近続編が公開されたことや、大学院時代の恩師がどういった文脈でだったか言及していたのをずっと覚えていたことなどから、ようやく観てみることにした。アンドロイドやサイボーグが意志をもち人類の脅威となるという、いまではテ…

「薔薇の名前」

中世の修道院を舞台にした原作小説の映画ということで、ずっと前から気になっていた。ただ題材は連続殺人事件の謎を解くサスペンスで、それほど興味を引かれていなかった。 結果として、なかなか面白い映画だった。何よりも舞台美術が素晴らしい。実際の修道…

「フランドル」

とにかく最初から最後まで虚しさに覆われたような映画だった。生も死も、セックスもレイプも、殺すことも殺されることも虚しい。抑揚なく、ただ淡々としている。 どの戦争に向けての招集なのかが分からなかった。製作された頃にフランスが参加した戦争は何だ…

「さらば、わが愛 覇王別姫」

1920年代から日中戦争を経て文化大革命後に至るまで、中国の伝統芸能・京劇の担い手が徐々に社会の激動に巻き込まれていく姿を描く。 まず冒頭から映像の美しさが際立っている。アリーナにスポットライトが当たるさま、京劇の舞台や衣裳、化粧はもちろん、金…

「PK」

マーティン・スコセッシ監督の「沈黙 ―サイレンス―」を「陰」とするなら、この映画は「陽」。宗教とは何か、信仰とは何かを明るく問いかける。宗教学の入門編にいい映画だと思う。 面白いのは、PKが神の存在を信じているところ。信じているからこそ、あらゆ…

「ヴィットリオ広場のオーケストラ」

ノンフィクションかと思って借りたらドキュメンタリーだった。 イタリア・ローマで暮らす移民の音楽家たちを集めて楽団を組み、閉鎖の危機にあったアポロ座で公演するまで、2001年から2002年までを追った作品。 楽団員集めに映画のほとんどの時間を…

「7月4日に生まれて」

ベトナム戦争の帰還兵が、下半身まひとなった体や過酷な戦争体験、信じていた祖国や周りの人々から裏切られた失望感から、激しく苦悩しながら生きる道を探る話。良い映画だと思う。 というのは表面的なストーリーにすぎなくて、もうちょっと俯瞰的に見ると、…

「たまこラブストーリー」レビュー 心理描写と「たまこまーけっと」との関係を中心に

これまで、京都アニメーションについては「演出力こそ醍醐味」と思っていたのだけれど、「たまこラブストーリー」は、それだけじゃなかった。ただ、ではいったい何がとくべつ良かったのかと言われるとまだよく分からないまま、でも感動したから何かしら書き…