「嘆きのピエタ」

 結構良かった。贖罪や悔悟、守るべきものができたが故の弱さなどテーマはありがちだったが、ある種のミステリー要素が加わることで見ごたえがあった。

 「メビウス」と併せて考えることで、途中までキム・ギドク監督は母親へのコンプレックスが制作の根底にあるのかと感じてもいた。あるいは近親相姦や、息子の性器を母親が食べるという行為に何かの意味を付与しているのかとも思った。

 ただ「母親」の正体が徐々に明らかになってくると、そのミステリー部分に思考を奪われた。面白かった。もしかしたらだが、主人公が障害者にしたのは兄弟だったのかもしれないとも思った。

 また音楽が良かった。トラックが走る様子を俯瞰したラストシーンは、「サマリア」と重なるものを感じた。肉体そのものを画面上に見せずとも死を伝えていて、壮絶でありながら、まだ夜明け前の静かな街並みが美しいとも思った。 

 カン・ウンジンが魅力的だった。

嘆きのピエタ [DVD]

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