「メビウス」
「サマリア」がとても良かったので、キム・ギドク監督の作品から漁ってみた。なかなか面白かったが、物語に空間的な広がりが欠けていたように思う。
セリフが一切ない。うめき声や悲鳴のみで斬新だった。
いろいろな意味での倒錯を描いた映画だった。浮気に始まり性器の切断、自慰と自傷もしくは「小さな死」としてのオーガズム、性器移植、近親相姦、男性器をめぐる執着など。イ・ウヌに一人二役を演じさせたのも、そうした倒錯を描くためかと思う。
セリフがない分、登場人物の気持ちや倒錯の構図を考えながら観るのは面白かった。
【追記】
……といったん書いたが、セクハラで告発されたキム・ギドク監督自身が釈明の中で、一人二役は元々母親役をあてていた女優の降板により、急遽決まったことだったと話していたようだ。これがそういういわく付きの作品であったことを忘れていた。
いずれにせよイ・ウヌの一人二役にはあまり違和感はなく、むしろ面白い試みだった。