「フランドル」

 とにかく最初から最後まで虚しさに覆われたような映画だった。生も死も、セックスもレイプも、殺すことも殺されることも虚しい。抑揚なく、ただ淡々としている。

 どの戦争に向けての招集なのかが分からなかった。製作された頃にフランスが参加した戦争は何だろう。イラク戦争かと思ったけど、フランスは反対を貫いていた。オランダは参加していたので、同じフランドル地方でもオランダが舞台なんだろうか。

 これまで観た戦争映画では「ノー・マンズ・ランド」が観た後の虚しさでいえば一番だったけど、この「フランドル」はまた違った虚しさだ。前者はまだ皮肉が利いていて、映画の狙いがよく見える。ラストシーンの虚無感や無力感は半端ではないが、まだ人の温度を感じる。

 一方のこの映画は、最初の農村の様子から寒々しく、陰鬱で、少女に告げない主人公の想いさえも熱を感じない。戦場は暑そうだが、相手が具体的に誰なのかも分からないため戦争の目的も、主人公たちが属する部隊のターゲットも不明で、やはりどこか冷めて観てしまうし、そういう描き方をしてあるんだと思う。最後の最後で主人公の感情が揺さぶられることによって、わずかに人間の温度みたいなものを感じ、ほっとする気持ちも抱くけれど、やはり戦争であまりに多くの犠牲があったことを顧みればやはり虚しい。

 そういう意味でよく作られた映画なのだと思う。カンヌ国際映画祭グランプリ。

 主人公の朴訥な感じが良かった。

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