「薔薇の名前」

 中世の修道院を舞台にした原作小説の映画ということで、ずっと前から気になっていた。ただ題材は連続殺人事件の謎を解くサスペンスで、それほど興味を引かれていなかった。

 結果として、なかなか面白い映画だった。何よりも舞台美術が素晴らしい。実際の修道院も使っているそうだが、圧巻だったのは迷路のような図書館と、火事のシーンだった。あの迫力や没入感、そして喪失感は、この立派な舞台装置あってのものだったと思う。

 犯人が誰かという観点のみでいけばありがちな展開だったけれど、そこに、知の集積地という修道院の特性や、各宗派の対立構造、聖と俗の対立軸、個性が強い登場人物などが絡んでいたことで、なかなか見ごたえのある作品になったのだと思う。

 ただところどころ、映画で描かれている内容だけからでは不可解だったり不明瞭な点もあった。古本屋で小説だか関連書籍だかを買っていたと思うので、読んでみようかとも思った。

薔薇の名前 特別版 [DVD]

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