「弓」

 好みのキム・ギドク監督による作品ということと、レンタル店で読んだあらすじが面白そうだったことから、以前から気になっていた。

 いい雰囲気の映画だと思いながら観た。キム・ギドク監督にしては比較的暴力性は抑え目だし、穏やかな音楽も非常に良い。

 ただ、最終盤で思わず笑ってしまった。「頭がおかしい」と思ったが、ひとしきり笑って考え直してみると、あの老人と少女が暮らした船は霊的世界だったのだと思えてくる。2人の本職も占い師の方なのではと考えると納得できる部分もある。

 弓は武器であり、楽器であり、占いの道具、すなわち神器である。

 メタファーを考えると、弓が女性で、矢が男性である。老人が弓を美しく奏でるのは少女を愛でることと重なり、少女が矢を折ることは老人への不満、怒り、そして老人からの自立を意味する。天に放った矢は長い時間をかけ、男性器のメタファーに変貌して戻ってくる。

 少女を演じていたのは、同じキム・ギドク監督の「サマリア」にも出演していたハン・ヨルムだった。妖艶さを備えた少女としてどちらも適役だし、どちらもいい作品だった。たいへん魅力的な女優だが、最近の出演作はあるのだろうか。 

サマリア [DVD]

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