2014年1月22日に発売された2枚のアルバム「TANCOBUCHIN」と「KGSD」を聞いた素人の感想

ガールズバンド「たんこぶちん」と「Victory」が22日、それぞれアルバム「TANCOBUCHIN」とミニアルバム「KGSD」を発売した。記事は書いたが、そこには盛り込めなかった感想、完全なる主観をここに書きたい。

 

 

「TANCOBUCHIN」は、既発のシングル曲「ドレミFUN LIFE」「シアワセタランチュラ」を含む12曲入り。デビュー前からのオリジナル曲としては「カラフルスニーカー」のほか、カップリングとして発表済みの「コイゴコロ」と「ヒカリ」、インディーズ盤として出した「UJIUJI」も含まれている。残り6曲のうち、彼女たち自身が手がけたものは「ソラノナミダ」(曲・詞とも)「We Gonna ROCK」(曲だけ)「走れメロディー」(詞だけ)。残りの「闘うばい!」「唇はもっと」「そんなに遠くない未来に」は提供曲だ。

 

初めて通して聞いた時は、「いろんな曲が弾けるようになったんだなあ」と思った。それはつまり、彼女たちのスキルが向上したためかもしれないし、もともとそれだけの腕はありながらそれが発揮される曲と巡り合うチャンスがなかったせいかもしれない。ただいずれにしても、2013年における彼女たちの活動が手繰り寄せた結果であることには間違いない。だから素直に、これだけ多彩な曲を、彼女たちの演奏で、声で聞けることがうれしかった。

あくまで素人の意見だが、単純に「この曲は好きだな!」と思える新曲が多かったこともある。「闘うばい!」のツービートっていうのかマーチ風っていうのかあの拍の取りやすい感じとか、疾走感の中に別れが見え隠れする歌詞や美しいコード進行がじんわり来る「走れメロディー」とか、効果的なピアノサウンドと大人びた歌詞がノスタルジーを誘う「そんなに遠くない未来に」とかは、特に気に入った。そういえば「走れメロディー」もキーボードはピアノだな。

 

全体を通しての構成も好みだった。特に、デビュー曲でスタートとしては何よりふさわしい「ドレミFUN LIFE」の次に、中学3年の時に初めて作った「カラフルスニーカー」を持ってきたところと、「走れメロディー」「そんなに遠くない未来に」のラスト2曲。前2曲は、曲ができた時期や経緯からしても、そして曲のイメージからしても明らかにスタートを思わせるし、後2曲はその曲間にちょうど「卒業」の2文字を想起させる。

あとこれはただの妄想なんだろうけど、中学3年の彼女たちが履いていた「カラフルスニーカー」が、「走れメロディー」では「虹色の夢を見せてくれた」「履きくたびれてくスニーカー」として登場している。ように見える。その関係が、なんだかまるで3年越しのアンサーソングのように思えたのだ。いずれも作詞したのは彼女たち。この2曲の間に、頼もしい成長を感じたのだった。

鶴﨑輝一さんが作詞・作曲した「そんなに遠くない未来に」は本当にいい。彼女たちと同じくらいの歳だったころに想像していた「そんなに遠くない未来」を、いつの間にか追い越してしまっていることに気付かせる。特に大人にとってパンチの強い曲だったと思う。聞いているだけれ、憧憬とか郷愁とか戻れない寂しさとか、もう半端じゃなくあふれてくる。

 

先に挙げた「お気に入りの3曲」は、いずれもメンバーの作曲したものじゃない。提供された曲ばかり。彼女たち自身が作った「ソラノナミダ」も「We Gonna ROCK」もいい曲なんだけど、僕はどうしてもあの3曲ほど惹かれるものを感じなかった。それはもちろん、曲を提供した鎌田雅人さんや鶴﨑さんはプロとして作曲や編曲で活動している人だから。比べるべくもないのは当然かもしれない。でもそこは、彼女たちの今後の課題であり、大きな伸び代でもあるのだと思う。

もちろん、これは個人的な感覚で書いていることだから、「ソラノナミダ」や「We Gonna ROCK」こそがいいのだという人もいるだろうし、それを否定するつもりもない。何せ僕は音楽の素人だし。

でも、ああいう、何ていうのかな。何が違うんだろう。一つの曲で、いろいろ変化がありながらも一貫性があるというか、そういう曲をもし彼女たちが書いてくれたら、その時はきっと、とてもいいものになる気がしている。だって、「走れメロディー」の歌詞は本当に素晴らしかったから。

 

いずれにせよ、このアルバムから、たんこぶちんはまた新しいスタートを切ることになるんだろう。個性あふれる彼女たちののびのびとした雰囲気は、見ていて気持ちがいい。彼女たちが今後、また新しい雰囲気の曲をたくさん聞かせてくれるのが本当に楽しみだ。

あと、YURIはライブでカッコよすぎ。

 

 

次に「KGSD」。5曲入りのミニアルバム。表題曲の「KGSD」が今城沙々さんの作詞・作曲であるほかは、すべてメンバーが詞と曲を書いている。作詞はAYAKIが多く3曲(「I Go Everyday」、「偽物スマイル」、「HAPPY LIFE」)を手掛けていて、作曲はMAYUKO(「I Go Everyday」)、MINAMI(「偽物スマイル」)、RENA(「U」。詞も)、全員(「HAPPY LIFE」)となっており、メンバーの誰もが曲を書けるという強みを出しているともとれる。

 

実際、曲の完成度は高い。この5曲のうち、初めて聞いたのは「HAPPY LIFE」で昨年春のことだったが、その時にもう良曲として頭にすっと入ってきて、以来ずっと、またこの曲を聞きたいと思っていたほどだ。「I Go Everyday」は何と言っても「KGSD」をも凌駕する疾走感が魅力で、メインのメロディーの明るさに対し、ハードロックっぽい前間奏のギャップもいい。「偽物スマイル」は歌詞のダークネスが曲にもよく表れている。詞が洗練された「U」は壮大ささえ感じるサビまでの盛り上がりが心地よく耳に入って来る。

一言でいえば、捨て曲がまったくない。早いうちから、こうした曲を作れるという確かな才能は強みだろう。

 

このアルバムを聞いていて一番よく感じるのは、リズム隊の存在感だ。編曲の段階でベースとドラムがより良く聞こえるように調整してあるのかもしれないし、その前に聞いた「TANCOBUCHIN」とは音作りの方向性が違うというだけかもしれないが、どの曲も、2つの楽器が重低音として力強く響いているように感じる。そのためなのか、曲がしまって聞こえるというか、完成度が高く聞こえるというか、そういう効果があるように思う。個人的には何よりのお気に入りはMAYUKOのドラム。あの「パンッ」という乾いたスネアの音は、パワフルで重く響き、聞いていて本当に気持ちがいいのだ。

そしてこのリズム隊が、Victoryを、彼女たちの持ち味である70~80年代のロックに歩み寄らせているのだと思う。すなわち、VictoryをVictoryたらしめている。もちろん、耳馴染みの良いギターリフやAYAKIの魂のボーカルもVictoryにとって不可欠な要素だが、そこにキレやタフネスやパワーを決定的に添えるのがリズム隊である。というのはもちろん、私的な意見。何回も言うけどなんせ素人なので、まったく的外れかもしれない。

 

またこのアルバムも「TANCOBUCHIN」同様、彼女たちはいろんな雰囲気の曲がプレイできることを印象づけるものでもある。遊び心を感じる曲はないが、それはおそらく路線の違いで、彼女たちはこの5曲にVictoryの「本気」をかけているのだという気がする。今の彼女たちにとって渾身の、珠玉の5曲なのだ。AYAKIがこのアルバムを一言で表現するなら「等身大」だと言っていたが、それはまさにその通りで、このアルバム以上に自分たちを大きく見せることはできないと言ってしまえるほどに、今の全力をかけた作品なのだ。

野心的を通り越して挑戦的なジャケットで、一部でAC/DCのファンを怒らせる展開になっているようだ。たしかに、先達の伝説的なアルバムにインパクトの力を借りるよりも、「等身大」の作品だからこそ、等身大の彼女たちの姿でジャケットを作ってもよかったのかもしれない。でもまあ僕はAC/DCのファンではないし、5人が5通りの表情で存分に楽しんでいる歌詞カードを見ていたら、なんだかどうでもよくなった。Victoryにとっては新たな一歩として刻まれたであろうこのミニアルバム。これからの快進撃を期待させるには十分な内容だったんじゃないかと、僕は思う。