「サマリア」

 たいへん良かった。キム・ギドク監督の作品は「春夏秋冬そして春」を観たことがあったことに後から気づいたが、この「サマリア」をもっと早く観ていれば、監督への評価もだいぶん違っただろうなと思わされるくらい、いい作品だった。2004年、第54回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞している。

 

 ヨジンとジェヨンという女子高生2人が、旅行費用のために繰り返している援助交際から物語は始まる。視点はジェヨンとその父親ヨンギの2段階をふむが、スポットが当たる登場人物はヨジン、ジェヨン、ヨンギと3段階に推移していく。シナリオも実際に第3幕まで区切られている。

 ヨンギにスポットが当たり、物語も終盤に達する頃には、「なぜこんなことになったんだっけ」と振り返りたくなる。3人それぞれの狂気によって、それくらいダイナミックに物語は動いていくし、その場面、場面に食いついて観てしまう力のあるシナリオだ。軸となる登場人物は少ないにも関わらず、これほど「遠くへ来た」と感じる映画はあまり覚えがない。感心した。

 

 ラストシーンが非常に良かった。ジェヨンがたどたどしい手つきで運転する車を俯瞰するカットなどは、未熟さや頼りなさがとてもよく表れていて、胸が締め付けられた。あの別れ方も素晴らしい。映画史に残るラストシーンとして選ばれていいと思う。その場面に流れる音楽も非常に美しく、心に残った。

 ヨジン役のカク・チミンとジェヨン役のソ・ミンジョンがいずれもあどけなく、非常に魅力的だった。

 「サマリア」というタイトルにも考えさせられた。「善意から相手を救おうとし、自分にできる最善を尽くして失敗に終わっても、罪には問われない」という「善きサマリア人の法」から取ったのだろうか。 

春夏秋冬そして春 [DVD]

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